椅子にじっと座れない子どもの“口の機能”とのお話 (感覚統合 × 口腔機能からやさしく理解する【3】)


【2025年12月10日 8:00 PM更新】

こんにちは

仙台市泉区・富谷市からも近いただ歯科クリニックです。

初めての方はこのブログの簡単な注意事項こちらの記事に目を通してください。

 

こんなお悩みありませんか?

「うちの子、どうして椅子に座っていられないんだろう…」
「ちゃんと注意してるのに、すぐ立ち歩いたり、身体をくねくねしてしまう…」

そんな悩みを抱えて小児歯科に来院されるお母さんは、とても多いです。

そして、その背景を丁寧にたどると“姿勢の問題”と“口の機能”が深く関係している ことが少なくありません。今日は、歯科医師として、そして日々小さなお子さんの発達を見ている専門家として、「椅子にじっと座れない」と「口腔機能・感覚統合」の意外なつながりを、やさしくお話しします。

育児を否定する内容では決してありません。


「そういう理由だったんだ」と、少しホッとできる時間になれば嬉しいです。

1. 椅子にじっと座れないのは“性格”ではないことが多い

まず、安心していただきたいのは
座れない=しつけ不足、性格の問題 ではない ということ。

子どもが椅子に座れない背景には、次のような身体の使い方が関わっていることがあります。

  • 身体を支えるインナーマッスルが未熟

  • 重力に対する姿勢保持が苦手

  • 感覚統合が未発達(体の位置がつかみにくい)

  • 口腔機能の弱さが姿勢に影響している

つまり、子どもの努力や「聞き分け」とは別の次元の問題が潜んでいるんですね。

2. “口の機能”と“姿勢保持”は実は一つのシステム

多くのお母さんが驚かれますが、
咀嚼(噛む動き)や舌の使い方は、姿勢保持と同じ土台の上に成り立っています。

口の機能と姿勢の共通点をまとめると、次のとおりです。

■どちらも「体幹の安定」が必要

  • 姿勢が不安定だと、舌がうまく動かない

  • 逆に、舌が落ち着かないと体の緊張が高まり、落ち着いて座れない

■噛む力が弱いと「姿勢のガタつき」を補うために身体が動く

噛む動きは、脳を覚醒させたり、全身の筋肉の緊張を整える働きがあります。

噛む力が弱い子、前歯がうまく使えない子は、
身体の安定を「動くことで補う」傾向があります。

3. じっと座れない子に多い“口腔機能のサイン”

ここはお母さんからも「当てはまるかも…」とよく言われる部分です。

★こんな様子はありませんか?

  • 食事中にすぐ立ち上がる

  • 姿勢が崩れ、手をついて食べる

  • 前歯でちぎるのが苦手

  • 麺類を吸い込むのが難しい

  • 舌の動きがぎこちない

  • よだれが多い、または口がポカンと開いている

  • 食事に時間がかかる

これらは、舌・唇・頬の筋肉が弱い、または使い方が不器用な可能性があります。口の機能が未熟だと、食事という「姿勢のいる作業」がとても大変になります。結果、身体をくねくね動かして、無意識に姿勢を補正しようとするのです。

4. 感覚統合の視点で見る“座れない”

子どもが姿勢を保てない背景には、次の感覚の発達も関係します。

■①固有感覚(身体の位置を感じる力)が弱い

自分の身体の位置を感じにくいと…

  • じっとしていると不安になる

  • 常に動いて位置を確認しようとする

  • 姿勢がふにゃっと崩れやすい

これは決して「落ち着きがないから」ではありません。

■②前庭感覚(バランス感覚)が未熟

椅子に座っているのに「落ちそう」と感じてしまい、ソワソワして立ち歩くこともあります。

■③触覚の敏感さ

  • 椅子の座面が気持ち悪い

  • 背中の接触が苦手

  • 安定した姿勢に不快が生じる

こうした感覚の偏りがあると、じっと座るのは大人が考えるよりずっと難しいことなのです。

5. “口”で姿勢が変わる?それ本当です

ここは専門家として最も伝えたい部分です。

■口周りの筋肉が弱い → 頭が前に落ちる

口呼吸や口唇閉鎖不全がある子は、顎の位置が不安定になり姿勢が崩れやすいです。

■舌が後ろに落ちる → 首・肩の緊張が増す

舌が正しい位置にいないと、全身の緊張バランスに影響します。

■噛む力が弱い → 体幹のスイッチが入りにくい

咀嚼は体幹を活性化させる大切な動き。
噛む力が弱い子は、姿勢が「ふにゃっ」と崩れやすい傾向があります。

6. 家でできる“座れる体”を育てるケア

ここからは、今日からできる優しいケアです。

どれも叱ったり頑張らせたりする必要はありません。
「自然にできる環境」を整えるだけで、子どもはぐんと変わります。

①食事の“座る姿勢”を整える

**ポイントは「足・お尻・背中の安定」**です。

  • 足が床につく椅子

  • テーブルの高さは胸の下あたり

  • 背中を支えるクッション

  • お尻は深く座る

足が宙ぶらりんだと、身体は安定せずモゾモゾしやすくなります。

②舌の位置を整える遊び

  • ストロー遊び(吸って運ぶ)

  • 舌で上あごをタッチする練習

  • 舌を口の中で「上下に動かす」ゲーム

舌の位置が安定すると、姿勢も落ち着きやすくなります。

③体幹を育てる遊び

楽しく取り入れられるものばかりです。

  • トンネルくぐり

  • 平均台ごっこ

  • 四つ這い遊び

  • ブランコ・揺れる遊具

どれも「椅子に座る力」の土台になる動きです。

7. ママたちがよく言う“育て方のせいじゃなかったんですね”

診療室でお話しすると、ほとんどのママがホッとした表情になります。

「注意しても言うことを聞かないから困っていた」
「甘やかしたのかなって思ってた」
「発達の問題かもと心配だった」

でも、実は
子どもが“座れない”のではなく、“座るための体が育っていない”ことがほとんど。

これは、お母さんの育児とは関係ありません。
誰のせいでもなく、ただ身体の発達のステップが少しゆっくりなだけです。少しの環境調整で、お子さんは自分で座れる力を身につけていきます。

お母さんが一番気にしているのは、

「うちの子、大丈夫ですか?」
「私の育て方が良くなかったですか?」

という点だと思います。

結論をお伝えすると、

あなたの育児は間違っていません。
お子さんはただ“育つタイミング”を待っているだけです。

もし「落ち着けない」「座れない」などの姿勢の問題があったら、
それはお母さんのせいでも、子どもの性格のせいでもありません。

口の機能、感覚統合、姿勢の発達
この3つが少しだけアンバランスなだけです。

今日お話ししたケアを少しずつ取り入れるだけで、お子さんの“座る力”は確実に育っていきます。

そして、お母さんの心ももっと軽くなるはずです。

の発達は全身の発達とつながっています。
それを知ることで子供を引っ張る子育てから背中を押して成長を助ける子育てに変わります。

まずはご相談ください。

こういった定型児の「食べる」機能の問題がある子供の一部は2018年から「口腔機能発達不全症」という病名で保険診療での治療の対象になることがあります。ただし、歯並び・かみ合わせの問題がある場合、矯正治療と同時に行うのは混合診療になるので、当院では矯正治療を行う場合は、矯正治療の中で指導をしています。また発達障害等の症状がある子供にはより専門的で細やかな介入や指導が必要になることがあります。

 

矯正の無料相談を行っています。(要予約)

無料相談では費用や期間だけでなく、患者さんの現在の今の状態、なんでこうなってしまったのか?そういったことを話します。矯正の無料相談は、診療日のどの時間でも対応していますが、必ず予約して来院してください。

 

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注意事項

*このページはただ歯科クリニックのブログです。あくまでも当院のの考えに基づいて書かれているもので、他院では診断・治療法・介入のタイミング等は違うことがありますのでご注意ください。

*このページの内容を無断で使用することは固くお断りいたします。

*医療法の改正に基づき術前術後の写真は掲載してません。無料相談時に類似症例を用いて説明をさせていただきます。




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